英語を独学で勉強している人も、誰かに習っている人もやっていはいけないことをやってしまっているので、なかなか上達しません。そのやってはいけないこととは何でしょう。いくつかあります。ここに紹介しましょう。

暗記

絶対に離婚せずに済む方法が一つだけあります。それは結婚しない事です。ちょっと例えが悪いですか。

では、絶対に忘れない方法とは? そうですね、最初から暗記しない事です。暗記ほど英語学習の邪魔になるものはありません。
暗記する人は必ず忘れます。
暗記する人は英文を自分で組み立てるトレーニングをしません。仮に忘れなかったとしても、覚えたことしか言えません。覚えたことしか言えないのでは、英語を話しているとは言えません。それは覚えたことを口にしているだけの、とても無機質な行為です。

例文暗記で単語を覚える人

かつての私もかなりな部分でそうでした。単語のテストでは良い点を取れるかも知れません。でもそれだけです。
例文暗記で英単語を覚える人は、その単語が必要なときに、すっとはなかなか出てきません。そうして、聞いても、その意味を理解するのに、いま話されている内容とは全く関係ない例文が頭をよぎります。あなたは理解するのにたとえ短い時間であったとしても、やはり時間を必要とします。そしてその間に、相手はもう別のことを言ってしまっています。ゆっくりの会話のスピードにすら、決してついていけません。

構文を暗記して英作文をしようとする人

あなたは日本語はペラペラに話せるはずです。そのあなたが、日本語の構文をたくさん暗記していて、その構文に色々違う単語を当てはめて話す、ということをしているでしょうか。

あるいはあなたの周りにも英語がペラペラの方が何人かいらっしゃるかも知れません。その人たちが、たくさんの構文を暗記していて、何か言おうとする度に、その記憶した構文に当てはめて、単語を入れ替え話をしていると思いますでしょうか? そんな面倒臭いことをしていたら会話になりません。構文暗記は日本の学校の英語のテストで良い点を取るためだけの、ただそれだけのものです。英語を話せるようになりたいあなたがすることではありません。
ではどうするか。
馴染むことです
これしかありません。
もちろん、時間には限りがあります。
あなたがネイティブであれば、生活の中で、同じ表現に何度も出会い、特に意識しなくても、いろいろな単語や表現に馴染んでいくことができたはずです。
でも、大人が外国語を学習する際、時間も限られていますから、そんな出会いを増やす工夫は必要で。
でも、同じ単語を何度もじっと見つめたり、同じ例文を何度も読んだりするのでは、結局暗記と同じことになり、応用が利きません。ですから、同じ単語や表現に、違った状況、違った分脈、違った時制で、何度も何度も出会えるようにする必要があります。
私の場合はそれを多読でやりました。
多読はやりようによってはあなたが思っている何倍も効果的な英語学習方法です。一石二鳥三鳥が可能です。
すでに述べたように、訳さず、頭から情報を拾うような読み方をすれば、あなたのリスニング力向上にとても良い練習となり、よく言う英語脳を鍛えることになります。
また、重要度の高い単語や表現から学ぶことができます。重要度の高い英単語や英語表現とは、使われる頻度の高いものですから、自然にそういった単語や表現から身について行きます。
さらに、ボキャブラリーだけでなく、沢山の英文に接することによって、もちろんあなたの英語に対する理解も深まります。
多読はこのように多くの効果が期待できます。もしあなたが、面倒臭がって尻込みしてしまうと、大変有効な英語学習方法を放棄していることになります。これを多聴と組み合わせてやると、さらに効果が上がることは言うまでもありません。ただ、闇雲に読めばいい訳ではない。

しかし、なんでもいい訳ではありません。ここは私の体験談が役にたつと思うので、以下にまとめました。少し長いですが、参考になると思いますのでお時間が許す場合はぜひ読んでください。

私が英語をマスターしてやろうと頑張って勉強しているとき、自分の英単語力の無さ、そのための読解力の無さに頭に来た私はレミゼラブルの英語のペーパーバックを読破してやろうと思いました。まだまだ十分な>英単語力も無いのに、今考えるとバカなことをしたと思います。
案の定、知らない単語に赤でアンダーラインすると、ページは真っ赤になり、辞書と格闘しながら、1ページ読むのに2時間以上かけたことを覚えています。それでも最初の10ページくらいは読みましたが、プロローグを読み終える前についにギブアップしてベッドに倒れこみました。
一つの単語を理解するためにはそれがどんな文脈で使われているか理解することが大切です。 ところが1ページに知らない単語が20も30も出てくるようだと、とても文脈など読み取れず、単語を辞書だけで理解することになります。 それでは意味がありません。
しかもレミゼラブルは古典的文学作品なので、ほとんど実生活では使わないような単語がたくさん出てきていて、私はもっとも重要でない単語から学ぼうとしていたことになります。
自分の愚かさに気がつきました。今まで見たことも聞いたことも無いような単語、ネイティブさえ知らない単語に膨大な時間をかけていったい何を学ぼうとしているのか。
その反動でしょうか。本屋さんで今度はアメリカの幼児向けの絵本を片手にぱらぱらと読んでみました。そこで私はショックを受けました。やさしい単語で書かれてはいても、私が習ったことも無いような表現がたくさんあり、絵と文脈から理解できることもありましたが、全く分からない部分もたくさんありました。
こんな幼児が読むような絵本すら理解できない自分がレミゼラブルなどとんでもない。そう思った私はその後、古本屋、図書館などを利用してアメリカ、イギリスなどの絵本を読みあさりました。 こういった優しい(?)子供向けの本から学ぶことはたくさんありました。そうして、私は自分の英単語の理解を深めていくことができ、さらに多くの知らない単語も無理なく吸収できる土壌を作っていったのだと思います。その後少しづつ、読む物のレベルを上げていき、今では英語の新聞のほうが、日本の新聞より読みやすく感じる自分がいます。
こんなふうに自分がなれたのは、背伸びをせず、自分の力不足をみとめ、自分の理解できる範囲のものから、確実に吸収していくことを徹底して行ったからだと思います。


完璧を求める

これまで、多くの生徒さんを見て来て、確信して言えることがあります。完璧を求める方は上達しません。あるいは上達のスピードがとても遅いですね。それは今自分が吸収できることに集中出来ないからです。言葉の習得は技能の習得です。何事もいきなり全ての技能をいっぺんに習得できるものではありません。どんなことにも上達には段階があり、それぞれの段階で吸収できるものとそうでないものとがあるはずです。英語でも、何もかも完璧に理解し、完璧に課題をこなさないと先は進めない人は、自分が理解できる範囲、吸収できる範囲に集中することができず、自分が理解できないこと、吸収できないことにいたずらに時間を費やしてしまうんですね。私はよく生徒さんに申し上げます。完璧を求めず、上達を求めてください。

訳す

あなたが赤ん坊の時に日本語を学んだようには英語を学ぶことができない最大の理由はなんでしょう?
それは今のあなたはもうすでに一つの言語をマスターしてしまっていることです。ですから、
日本語の訳で英語を学ぶことがいかに意味の無いことかは、すでに述べていますし、
もう多くの方がいろいろなところで語っていますから、ここでことさらに申し上げる必要はないのかもしれませんが、英単語学習という観点からも、一つ例を挙げておきましょう。

notice, perceive, recognize, discern, realize,これらの英単語は全て “気づく”と訳されます。しかし、意味や使い方が違います。 以下のような日本語と同じようなことを英語で言いたいとすると、あなたはどの英単語を使えばいいか瞬時に分かりますか。

  1. Susanが髪を切ったことに気がつかなかった。
  2. ずいぶん変わられたのであなたとは気がつきませんでした。
  3. あなたは事の重大さにようやく気がついたようですね。
  4. notice: I didn’t notice Susan had gotten her hair cut.
  5. recognize: You look much different now, so I couldn’t recognize you.
  6. realize: Finally, you seem to realize how serious the problem is.

きわめて簡単に説明すると、noticeは変化を見ること、recognizeはある物や人を間違いなくそれと認識すること、realizeは事の重大さや程度を実感することです。
これらの英単語が間違いなく使い分けられるためには、その英単語をイメージとして理解していて、使いこなす練習をしていないと無理です。単なる日本語訳とせいぜい一つぐらいの例文を覚えていても瞬時に使い分けられるはずがありません。
もちろん単語だけではありません。日本語と英語とはいろいろな意味で逆を行きます。和文英訳、英文和訳的なことをやっていたのではいつまでたっても自然なスムーズな英語を話せません。
ましてや、英語のあとにいちいち日本語を聞くようなトレーニングをしていたのでは、永久に英語脳を構築することは不可能です。ピアノはピアノでしか練習できない。ピアノを琴を使いながら練習できないのと同じことです。

和英辞典を使う

英語学習者が和英辞典を使う。これは私には信じられません。和英辞典を使う人の発想は「この日本語は英語でなんていうんだろう?」ですね。つまり入口が日本語です。

ある特別な物の名前、例えば人の臓器の呼び方や、草花、動物の名前などを英語でどういうか和英辞典を使うのなら、まだ許容範囲ですが、動詞や形容詞、あるいは概念的な名詞を和英辞典で調べて、それを使おうとする人は、永久に日本語を英単語を使って話すだけで、日本人にしかわからない不自然な英語を話し続けます。また、和英辞典に頼る人は、今自分が知っている英単語を使いこなす努力をしません。今知っている英単語を使いこなすトレーニングをする方がはるかに大切なのに、安易に和英辞典で調べて見つけた英単語を使う限り、あなたは今ご存知の英単語を使いこなせるようにはならないばかりか、その場限りで調べたその英単語も理解できませんし、覚えることはありません。時間と労力のムダですね。英単語というものは、この日本語は英語では?という発想で学んで行くものではありません。
英語にたくさん触れている中で、少しずつ馴染み、使える単語を増やして行くしかないのです。遠回りのようでも、実はこれが一番確実で早道です。暗記しようとして忘れることを繰り返す人は、時間ばかり浪費して、ほとんど学ぶことはないんですね。
少しでも早く英英辞典に移行しましょう。

頭に浮かぶことを全部言おうとする

完璧を求められる方と同じですね。頭に思い浮かぶことを全部言おうとする人も、上達しません。ある認めざるを得ない事実を忘れないことです。あなたの日本語とあなたの英語とでは、まだ圧倒的レベルの差があるはずです。あなたの頭に浮かんでくることはあなたの日本語でなら全部言えることです。それをあなたの英語で全部言おうとすると、言えない、の連続になるだけです。言えないことにいたずらに時間を費やし、結局何も言えないより、言えることを確実に言うことに力を集中する人は、次第に言える範囲が広がります。今持っている英語力を鍛えること、その習慣がついている人が、少しずつ新しい知識も増やしていけば、表現の幅も広がり、無理なく上達して行くことができます。